<オピニョン>

科学者の社会的責任

西山 豊

2016年12月21日更新

 事故や災害と呼ばれるものを整理してみると、自然災害というより人災とみるべきものが増えています。

 2005年 JR福知山線脱線事故
 2011年 福島第一原発事故
 2012年4月  関越道高速バス居眠り運転事故
 2012年12月 笹子トンネル事故[1][2][3][4]
 2014年 広島土砂災害
 2015年 巨大組体操事故[5]
 2016年 博多駅前道路陥没事故

 これらは人災の要素が大きく、事故ではなく事件であり、危険予知が可能で、防げたものと思います。

 事故が起こると、報道関係は、その悲惨さを伝えますが、その原因を追究することはしません。そして事故にあわれた遺族の方に焦点が移ります。これは、間違いではないでしょうか。私たちすべてが事故や災害にあう可能性があり、再発防止のため原因の解明がとても大切です。

 笹子トンネル崩落も、ご遺族だけでなく全国8000万ドライバーの問題としてとらえなおす必要があると思います。

 私は大学に勤務していますが、「科学者の社会的責任」を強く感じています。自らの研究に没頭するのではなく、社会のことに少しでも関心を持ち、発言することの重要性を感じます。理工学の基礎的な知識があれば、笹子トンネル崩落の原因は容易に解明できます。ノーベル賞受賞者を輩出している日本ですから。

 国土交通省の事故調査・検討委員会、NEXCO中日本の有識者会議、NEXCO総研には自然科学者が多いと思います。そして高価な測定車を持っているはずです。原因が特定できない、インフラの老朽化で済ますのではなく、しっかりと事故原因を解明してほしいものです。それが社会的責任というものです。


(参考資料)

[1] 西山豊「笹子トンネル崩落の新事実 (1) ―天井板の連結が大惨事をまねいた」 日本科学者会議、第21回総合学術研究集会(龍谷大)、2016年9月3日
[2] 西山豊「笹子トンネル崩落の新事実 (2) ―車両の接触事故が引き金か」、2016年11月11日
[3] 西山豊「笹子トンネル崩落の新事実 (3) ―リフレッシュ計画延期の謎」、2016年11月18日
[4] 西山豊「笹子トンネル事故を考える―科学者の社会的責任から」『日本の科学者』48(7), 34-40, (2013)
[5] 西山豊「巨大組体操の危険性を検証する」『日本の科学者』(51)9, 32-37, (2016)

各ホームページの最終閲覧: 2016年12月21日



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(にしやま・ゆたか:大阪経済大学、数学)