<オピニョン>
―笹子トンネル崩落の新事実 (6)― 西山 豊 1 はじめに 国土交通省に「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」が2012年12月3日に設置され、2013年6月18日に報告書が出され、7月31日に資料集が出された。 「笹子トンネルの真相を探る会」(代表:三宅勇次)は、これら報告書と資料集を精査する中で、多くの間違いや疑問点を発見した。その都度、国土交通省のホームページから問い合わせてきたが、満足のいく回答が得られなかった。 国土交通省の担当職員が回答できない内容なので、早急に事故調を再開し検討することを要望する。 また、同様の内容でNEXCO中日本にも問い合わせているが、現在のところ全く回答がない。 笹子トンネル天井板崩落の原因を明らかにすることは再発防止に不可欠なので、NEXCO中日本の「安全性向上有識者会議」は真摯に対応することを要望する。 主な問い合わせの10件、意見の5件をつぎに示す。 2 問い合わせと回答 Q1 写真の表と裏が逆になっていますが、なぜですか? 報告書9ページの図3.1.2、資料集166ページの写真の表と裏が逆になっています。A-26, A-178の文字が逆になっていることから判断できます。間違いと思いますので訂正してください。 [付記] 何度も訂正を要求しましたが、訂正はされず、説明の追加もありません。これ以上要望しても時間の無駄なので問い合せをやめました。学術論文ではデータの改竄(かいざん)に該当し、犯罪になります。 この図は、天頂部接着系ボルトの変形の向きにより、最初に落下した隔壁を推定するものです。名古屋を左に、東京を右に配置して作表したため、名古屋側のアンカー(A-26)は東京側に向かって変形し、東京側のアンカー(A-178)は名古屋側に向かって変形する必要がありました。その写真がなかったため、A-26とA-178の写真を裏と表を逆にして使用したと思われます。変形の向きが重要なとき、どうして図を反転させるのでしょうか。 2016年 01月31日 09月09日 受付番号 1609090600036 09月23日 受付番号 1609230600001 10月14日 受付番号 1609230600009 (10月12日の回答に対する再度問合せ) 図1 写真の表と裏が逆になっている(報告書9ページ) 10月12日 回答 「報告書及び資料集では、変形方向がわかるように記載しております。写真と併せて凡例等をご覧ください」 11月09日 回答 「報告書においては、東京側が右、名古屋側が左となるように整理を行っており、ボルトの写真はこの整理にあわせた向きで掲載しております」 Q2 2012年12月以前に天井板が撤去された例を教えてください。 中央道小仏トンネル(2001年、2003年に撤去)のように、2012年12月(笹子崩落)以前の例を要求したが、意味を取り違え、2012年12月以降の例を示してきた。再度問い合わせたが回答はない。 09月10日 受付番号 1609100600009 09月25日 09月25日の回答につき再度問い合わせ A2 09月25日 回答 資料集の34ページ (我が国の天井板を有するトンネル一覧)により、2012年12月以降の例のみ回答。 Q3 高さ4.7mのトンネルに高さ4.95mの大型トラックが通過できたのはなぜですか? 資料集の194ページ、195ページには、2008年6月10日、大型貨物車が普通貨物車(コンテナ型)を積載し高さオーバーで進入した為、トンネル天井に接触し、天井に擦過痕が残ったとある。発生場所は上り線 84.4キロ〜81.4キロの間であるので、トンネル全長(4417m)の約7割(3キロ)の区間にわたって接触したことになる。積載車の高さは4.95m(図2)。 09月24日 受付番号 1609240600020 09月28日 NEXCO中日本にも問い合わせ 10月14日 受付番号 1610140600254 (10月12日の回答に対する再度問合せ) 10月28日 NEXCO中日本に再度問い合わせ 図2 高さ4.95mのコンテナ車が4.7mのトンネルを通過(資料集の194ページ、195ページ) 10月12日 回答 「当該資料は中日本高速道路(株)からの報告資料であるため、内容の詳細については中日本高速道路(株)へご確認ください」 11月09日 回答 「当該資料は中日本高速道路(株)からの報告資料であるため、内容の詳細については中日本高速道路(株)へご確認ください」 Q4 天井板の撤去は約20日間でできたのに、180日かかるとした理由は何ですか? 資料2-2の8ページによれば、リフレッシュ計画を延期した理由のひとつとして、工事期間中の通行止めがあげられる。NEXCO中日本が国土交通省に提出した資料では、事業期間として約1年【うち通行止め 上り線:約5カ月、下り線:約5カ月(通行止期間中は片側を対面通行)】としている(図3上)。 資料8の8ページによれば、「対面交通にてリフレッシュを実施(上り150日 下り180日)」となっている(図3下)。下り線は当初5カ月としていたが、180日に変更して1カ月長くなっている。 ところが、2012年12月2日の天井板崩落事故以後の、下り線の天井板撤去作業は12月8日から始まり、12月29日で開通しているので、約20日で工事が終わったことになる。上記説明では180日かかるとしたが、実際は9分の1の日数で工事が完了したことになる。 工事期間180日の算定基準はどうなっているのかについて問い合わせた。 10月05日 受付番号 1610050600026 10月05日 NEXCO中日本にも問い合わせ 図3 通行止め期間(赤色下線は著者による)(資料2-2の8ページ、資料8の8ページ) 11月09日 回答 「笹子トンネルリフレッシュ計画の内容については、中日本高速道路(株)へご確認ください」 Q5 天井板の左右で重さが違う理由は何ですか? 資料3の3ページによれば、天井板のA板とB板は仕様(厚みと重さ)が違いますが、理由を教えてください。(A板は80ミリで1.16トン、B板は90ミリで1.385トン) 11月18日 受付番号 1611180600015 図4 天井板の左右で重さが違う理由は何ですか?(資料3の3ページ) A5 12月14日 回答 「設計内容の詳細については、中日本高速道路(株)へお問い合わせください」 Q6 事故調が車両の接触事故に言及しなかったのはなぜですか? 報告書の37ページ以降には、「落下メカニズムの推定及び事故発生要因の整理」があるが、複数の要因をあげて原因の特定がなされていない。2005年、2008年に発生した天井板接触事故は2012年12月の崩落の大きな関係があると考えるべきだが、このことへの言及はまったくなく、資料にとどめている。 高さ4.7mのトンネルに高さ4.95mの大型トラックがどうして通過できたのか、事故調の7名の委員から誰も、質問や疑問が出なかったのはどうしてか。 12月24日 受付番号 1612240600018 A6 回答なし Q7 事故調の再開を要望します 「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」の報告書と資料集について精査したところ、多くの間違いや疑問点を見つけました。その都度、国土交通省のホームページから問い合わせてきましたが、満足のいく回答が得られませんでした。国土交通省の担当職員が回答できない内容ですので、早急に事故調を再開し検討することを要望します。 「笹子トンネル崩落の新事実 (6)―国交省・NEXCO中日本への問い合わせと回答」 <ここ> 2017年 2月8日 受付番号 1702080600241 A7 回答なし Q8 天井板損傷(2005年9月点検)の詳細な位置(KP)を教えてください。 事故調の資料集、194ページに「@点検による天井板損傷の確認(2005年9月26日〜28日)」が掲載されていますが、82.922KP〜82.501KPの42箇所、81.972KP〜81.851KPの5箇所について詳細(それぞれのKP)を教えてください。 http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/tunnel/siryo/03.2.pdf <ここ> 5月8日 受付番号 1705080600XXX A8 回答なし Q9 天井板の連結構造についてお尋ねします。 笹子トンネルの「天井板の連結構造」についてお尋ねします。 Q1: 国土交通省、事故調の資料集、38ページには「笹子トンネルにおける天井板構造の設計施工の実施体制」として、潟pシフィックコンサルタンツが設計を受注し、施工管理員になっています。これは間違いないでしょうか。 http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/tunnel/siryo/02.2.pdf <ここ> Q2: CT鋼には隔壁板6枚と天井板12枚の合計18枚が取り付けられていますが、隔壁板が隣のCT鋼にまたがって取り付けられているため、すべての天井板が連結する構造になっています。天井板が落下すると、その衝撃で隣の天井板がつぎつぎと落下することになります。フェールセーフでは考えられない設計ですが、どのようにお考えでしょうか。 Q3: このような連結構造は、潟pシフィックコンサルタンツが設計したのでしょうか。旧道路公団は、誰がそれを認可したのでしょうか。それとも旧道路公団が設計の指示をしたのでしょうか。8000万ドライバーの安全のために、たいへん重要な事柄ですので、必ずご回答くださるよう依頼します。 (参考) [1] 「笹子トンネル崩落の新事実(1) 天井板の連結が大惨事をまねいた」2016年9月3日 <ここ> [2] 「全国8000万ドライバー安全のために、笹子トンネル天井板崩落(記事、資料)」 http://www.osaka-ue.ac.jp/zemi/nishiyama/sasago.html <ここ> 5月23日 受付番号 1705230600019 A9 回答なし Q10 『日経コンストラクション』の記事(2006年8月25日)を誰も知らなかったのですか? 『日経コンストラクション』の記事についてお尋ねします。 「米国ボストンのトンネル天井パネルが落下 アンカーボルトの施工に不具合の恐れ」『日経コンストラクション』、406号、22ページ、2006年8月25日 <ここ> ボストン事故(2006年7月10日)について、事故調の最終報告書(2013年6月18日)では、それが出るまで、この事実を知らなかったかのような記述がありますが、国土交通大臣以下、管理職、一般職の約6万人は、この記事を誰も知らなかったのでしょうか? 『日経コンストラクション』は職場で購読されているのでしょうか? 購読されていなくても技術系職員が7割いますので、個人的に購読して誰かが読んでいたはずです。ボストンの教訓が生かされれば、笹子の事故は防げたはずです。国民の生命と安全を守る立場に国土交通省は存在しますので、上記質問に真剣にお答えください。 (参考) [1] この記事は、イギリス土木学会(Institution of Civil Engineers)の定期刊行物(New Civil Engineer)の2006年7月20日号の翻訳です<ここ>。ボストン事故は世界的に有名な事故でした。 [2] 日経BP社によれば『日経コンストラクション』の2013年の発行部数は 23,797部で、国土交通省の700人が定期購読とあります<ここ>。日経BP社に問い合わせたところ、2006年の発行部数は 29,091部ですので、少なくとも700人以上がボストン事故の記事を読んでいることになります。 [3] ボストン事故の教訓がなぜ笹子に活かされなかったかについて次の記事があります。 高木千太郎「これでよいのか専門技術者 A天井板落下事故で類似している米国・ボストBig Digと中央道・笹子トンネル」『道路構造物ジャーナルNET』2015年7月1日<ここ> 12月7日 受付番号 1712070600030 A10 回答なし 問い合わせではなく、意見として以下の資料を提供しました。 ------------------------------------------------------- Z1 現地計測 西山豊「天井板崩落は予知できた―笹子トンネル現地計測を終えて」 <ここ> 2017年 5月14日 受付番号 1705140600012 Z2 週刊金曜日 明石昇二郎「スクープ!笹子トンネルの天井板落下事故で新事実 大成建設施工の天頂部だけが波打っていた」『週刊金曜日』2017年6月23日 http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2017/06/23/news-2/ <ここ> 6月24日 受付番号 1706240600021 Z3 大阪経大論集 西山豊「天井板崩落は予知できた―笹子トンネル現地計測を終えて」『大阪経大論集』Vol.68, No.3, 1-19, 2017年9月 http://www.i-repository.net/il/user_contents/02/G0000031Repository/repository/keidaironshu_068_003_1-19.pdf <ここ> 9月16日 受付番号 1709160600011 Z4 ボストン事故 VS 笹子事故 ボストン事故の教訓として、「ボストン事故 VS 笹子事故」をまとめました。 <ここ> 10月27日 受付番号 1710270600025 Z5 山梨県警への告発状(2017年11月2日) 山梨県警察本部長 青山彩子殿 平成29年11月2日 告発人 三宅勇次 西山 豊 西田 稔 <ここ> 11月9日 受付番号 17110906XXXXX (参考資料) [1] 国土交通省「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会報告書」2013年6月18日 [2] 国土交通省「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会資料集」2013年7月31日 [3] 西山豊「笹子トンネル天井板崩落(記事、資料)」 各ホームページの最終閲覧: 2018年1月6日 メールアドレス: nishiyama@osaka-ue.ac.jp Contact me (にしやま・ゆたか:大阪経済大学、数学)
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