<オピニョン>

トンネル内空測定にむけて:レーザー距離計の操作手順

西山 豊

2017年3月31日更新


はじめに

 私たち「笹子トンネルの真相を探る会」(代表:三宅勇次)は、笹子トンネル上り線の内空調査を計画しています。
 調査に用いる機材は、ライカ社製のレーザー距離計 DISTO D2(図1)とWindows10のノートパソコンです。



図1 レーザー距離計



 レーザー距離計により、トンネル天頂部までの距離を連続測定します。
 測定データは Bluetooth により、ノートPCに転送されます。
 Windows10のノートPCにあらかじめインストールしておいた転送用ソフト DISTO transfer PC により、測定データはExcelシート上に計測時刻とともに保存されます。
 操作手順を参考資料[4]にまとめました(図2)。



図2 レーザー距離計からExcelシートまでの操作手順


1 測定する理由

 どうしてトンネル内空調査を計画するようになったかの理由は、参考資料[1][2][3]をご覧ください。
 天井板崩落現場(図3)と大型トラックの天井板接触事故(図4)の関連性を調べるためです。
 レーザー距離計とデータ転送ソフトの機能テストは終了し、笹子トンネルでの計測を待つだけとなりました。



図3 笹子トンネル天井板崩落(2012年12月2日)



図4 大型トラックによる天井板接触事故(2005年、2008年、2012年4月)


2 測定の3方向

 現在考えている測定は図5の3方向です。左右の長さから車の位置が決まります。上部はアーチ(円弧)ですので、天頂部からずれていても補間計算できます。
 本来、このような測定は、国土交通省、NEXCO中日本、山梨県捜査本部、裁判所が行うべきものです。ところが、私たちの諸々の問い合わせに、国交省、中日本は真摯に回答していません[5]。
 中日本は高価な測定車を保有していると思われ、真相解明のため、やる気があればいつでも測定できるはずです。
 私たちの簡易測定は、関係組織の本格測定を促すためのものです。



図5 測定の3方向


3 崩落現場は特殊区間の近く

 天井板崩落の原因として国道20号との交差が考えられる。中央自動車道は国道20号線と交差している(図6-1)。笹子トンネルと新笹子隧道(国道20号線)は約24mの至近距離で交差している[6]。交差区間は東京からの距離で82.2KPと82.4KPの間である。
 ところが崩落したのは82.5KPから82.7KPの間であり、交差区間と約100m甲府側にずれている(図6-2)。
 大型トラックの接触事故(〜2005年9月)も交差区間では起こっていない。それはなぜか。



図6-1 崩落現場と国道20号線との交差区間



 報告書の6ページによれば、つぎのようにある。

「また、建設当時の工事関係書類及び事故後の緊急点検の観察結果によると、東京側 L断面の国道20 号との交差部及び米沢川換気所の下方にあたる区間は「偏荷重の想定 される特殊区間」であると位置づけられ、施工段階において、1本のCT 鋼当たり16 本のボルトに加えて4 箇所、合計で243 箇所にて、直径24mm、長さ2550mm のロックボルトが追加され、荷重の一部を地山に保持させるよう変更が行われていた。」

 崩落現場のL断面区間は道路から天頂部までの高さが10mもある。施工では10mの高さに生コンを打設しているので30pくらいの沈下は常時と聞いている。沈下しないようにロックボルトで地山の岩盤に固定するなど工夫していた。
 交差区間は丁寧に施工していたので天頂部の沈下はそれほどなかったが、この特殊区間を挟む両隣の区間では天頂部がそれなりに沈下していたと思われる。

 天頂部の沈下は、天井板の低下につながる。隔壁の長さを短く調整することで、道路から天井板までの高さ4.7mを均一にすることができるが、それがなされていたかは不明である。山梨県警捜査本部にはすべての天井板と隔壁が押収されているので、調べれば確認できるはずだ。

 天頂部の沈下や天井板の低下は、1976年開設当時は問題なかったが、大型トラックがコンテナ車を積載してトンネルを通過するようになり、天井板と接触事故を起こした(〜2005年9月)。その接触事故が天井板崩落(2012年)の引き金になったと推測できる。

 今回のトンネル内空調査により、天頂部の沈下が10cmでも認められるなら、天井板崩落の真相が明らかになるのではないか。



図6-2 崩落現場と国道20号線との交差区間



(つづく)



(参考資料)

[1] 西山豊「トンネル内空測定の意義と方法」、2016年12月27日
[2] 西山豊「笹子トンネル崩落の新事実 (2) ―車両の接触事故が引き金か」、2016年11月11日
[3] 国土交通省「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会資料集」2013年7月31日、194〜195ページ
[4] 西山豊「レーザー距離計DISTO D2 の測定データをExcel シートに保存するための操作手順(Windows 10 搭載のアプリ DISTO transfer PC とBluetooth を使用)」、2017年3月26日
[5] 西山豊「笹子トンネル崩落の新事実 (6)―国交省・NEXCO中日本への問い合わせと回答」、2017年2月7日
[6] 西山豊「笹子トンネルと新笹子隧道の3 次元空間における距離:約24m」、2013年4月3日

各ホームページの最終閲覧: 2017年3月30日



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(にしやま・ゆたか:大阪経済大学、数学)